「一花って、好きなやつ、……いたりすんの?」
花壇に植えられた紫陽花に視線を置いたまま、彼がそう言った。
「……なんで、…そんなこと訊くの?」
大袈裟かもしれないけど。
一瞬、時間が止まったかと思った。
空を覆う雲の灰色ですら、キラキラと輝いて見えた。
彼の纏う空気は、いつだって特別で。
簡単には触れることができなくて。
臆病なわたしは。
ただ、眺めることしかできなかったから。
「オレ、一花のことが好きだ」
彼の言葉を、素直に受け取ることができずにいた。
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