……とあるある夏休み…

私、川梨翠【かわなしみどり】十五歳。
好きな食べ物はチョコレート。
んでもって今、私は誰もいない学校で遊ぶという約束をして自分のクラスの二年C組の教室にいる。


…性格はもう最悪だよ……自分で言ったらおかしいかもだけど私、頑固だし、諦めも悪い…。
例えば昨日、私の意見に固執してチームワークを見出してしまったことだとか。あとは習い事の水泳で時間を過ぎていてもずーっと練習してたことだとか…もう母は呆れちゃってww

「はぁ〜…やっぱり私って何にもできない奴なんだな…んねぇ、響…」

私が自分自身思ったため、ため息を付きながらそうつぶやくと後ろの席の
矢井田響【やいだきょう】が私の方をつついて言った。

「あのさ、僕が言っていいのかわからないけどさ…そのー僕、翠ちゃんは何でもできる子だって思ってるんだけどさ…」

と。
…響は私の幼馴染でもあるため、私のために言ってくれたのだろう。

「ありがと、響。無理に言わなくてもいいのに」

「え…無理して言ってないよ、本当のことを言ったんだよ」

「そうなの…まぁ、ありがと」

私は少し疑いつつもお礼を言って前を向いた。

「あ!そういえば美紀はまだ来てないんだね…」

「美紀…嘘?!ホントだ!」

美紀というのは響の妹、矢井田美紀【やいだみき】十五歳。
妹は妹なんだけど、響の母と美紀の父が再婚して…まぁ、義理兄妹だ。身長も眼鏡の種類も一緒だ…。しかも声なんか似過ぎてて…ほっんと瓜二つって感じだ。それに、あんまりにも仲が良いので周りから
「恋人同士なんじゃないのー」

「っていうか、兄妹ってこんなに仲良くないじゃん。絶対にシテるって」
とか。
色々変な噂をたてて…ほんと可哀想。

『まぁ、私は信用してないから。もし私が信用してたら親友…いや、幼馴染という立場ではいられない…いられるはずがないから……』

「…り……翠!翠!!ねぇ、聞こえてる?おーい!」

「…ひゃっ!?……あ、響…どうしたの…?」

「いやだって、僕が真剣な話をしてるのに全く返事してくれないから…」

「ご、ごめん…次はちゃんと聞くからさ、もう一回言って。ねっ、お願い」

「う…うん……でも、もう勇気が出ないや…紙に書いて教えてもいい…かなぁ…?」

「え?!……べ、別にいいけど…」

私は一瞬、心が跳ねた。なんでって…だって響が
『紙に書いて教えても…』
って響、紙に書いて教えてくれる時って真剣な話の時だからだ。

『もしかして響…私のこと嫌いになっちゃったのかな…』

「響…ホントゴメ…ん??」

私は謝ることと同時に響が書いた紙をチラッと見るとそこには衝撃深い二文字が書かれてあった…それは

【好き】

という二文字だった。

「…ん??…こ、これってどういう感情なの?幼馴染として…?それとも恋愛感情ってこと……?」

私の頭の中はもうパニックだった。だって私も…初恋だから嬉しかった…。

『…でももし響がこの紙に書いてくれた言葉が全然違う意味だっったら恥ずかしすぎてまともに顔が見れないかもしれないし……わーー!もう!…今の私の顔みっともない顔してるかも…』

私はさらに不安になった。

「さっきから百面相みたいで…なんというか、翠ちゃん、可愛すぎるよ……」

「……えっ!…ということは響、私に恋愛感情を抱いてたの?!…全く気が付かなかった……」

「そ、それはずーっと我慢してたし…そのー……隠してた…」

「……え?」

響の言葉、一言一言が嬉しいし、夢みたいで本当に現実かわからなくなる…。

『私は響のこと、恋愛対象としてちゃんと見ていた…なのにどうして……隠してたってどういう意味なの…?』

私は一気に青ざめた。

「…あれ、どうしたの、翠ちゃん?……あれ、僕のこと、好きなんじゃないのー……っ?!もしかしてー…僕のこと、さらに好きになったとか…?僕ってこんなにも幸せだったなんて…生きてて良かったって更に思ったよ。ありがと、翠ちゃん。ほんと大好きだよ」

響は私に彼なりの愛情表現をしてくれている…。

『響って、こんな子じゃない…私が知ってる響はもっと素直で可愛いし、なんというか…』

私はどうしてこんな人が初恋だったのかだんだんわからなくなってきた。
そんなときだ…。

「美紀、やめてよ…」

という声が聞こえた。

「…え?……ど、どうして…」

「ん??どうしたの?」

「どうしたのじゃないよ、美紀!とぼけないでよね!!僕の翠ちゃんに手を出してさ!まったくもぅ!」

「…あれ……響が二人いる…?……やっぱり夢だったんだ…」

私はうっすら、目に涙を浮かべた。

『私、少し期待してた…歪んだ愛でも…夢でもいい…だから私のことを好きって…そう思ってた……それなのに響じゃなくて美紀だったって…それでも私…私は……………っ?!』

ふと顔をあげようとした瞬間だった…。

「ごめん!!僕の妹が…こんなの酷すぎるよね……ほんとごめんね!」

突然の出来事だった…。
…響が私を力強く抱きしめている……。

「……っ!!」

『どうして私なんか…』

「…僕ね……美紀の言ったこととほぼ似てるんだけど…でも、本当に翠ちゃんのことが、ずーっと好き……いや、大好きだったんだよ…でもさ、この気持ちに気がついたときからずっとずーっと目で翠ちゃんを追ってたよ。でもね、僕の気持ちが翠ちゃんを苦しめたら嫌だなって…そう思っちゃってさ……」

「…嘘……だって響、私が告白したのに『…あー、ごめんね、僕さ、こんなモブだし、翠ちゃんを幸せにできないしさ…ごめん……』ってフッてきたくせに…それどれだけ傷ついてその場から逃げ出したかわかる…?」

「ごめん…それは僕が悪かった…けどさ、僕の話を最後までちゃんと聞かないからそんな嫌な思いになちゃったんだよ……」

「…え…?最後までって…その後にまだ続きがあったの?!」

「うん、当たり前だよ……あの後さ、僕、一生懸命翠ちゃんを追いかけたけど、僕の足の速さと体力じゃ全然追いつけなかったし、すーぐ下級生には馬鹿にされてさ…」

「…え、それで…私に最後、言いたかったことは何なの…?」

「……い、今言わなきゃダメなのか…?」

「うん!気になる…から」

私はほんの少し頬を赤く染めてボソッと言った…。
自分で言った言葉に少し恥ずかしくなったからだ…だって。

『まるで私が早く付き合いたくて仕方がない人になっちゃってる……』

「ご、ごめん。言えるようになったらでいいから…その時になったら絶対、教えてね……約束…だよ」

私は少し手が震えたものの、響に小指を差し出した。

『…あれ、もしかして私…変なこと言っちゃったのかな……?』

不安になった私…。

『どうしよう…やっぱり私の発言、変だったのかも……』

時間が経つに連れて不安という気持ちがどんどん増えてくる…。

無言状態が続く中…美紀が急にお腹を抱えて笑いだした。

「美紀、どうしたの?」

私が震えた声で聞いた。すると美紀は響を睨んでこう、言った。

「翠ちゃんを泣かせたらこの美紀が許さないからね!…私にできることはこれくらいだからさ……響にぃー、わかった??…それじゃぁ後は翠ちゃんと二人の時間を楽しんでね!!それじゃまた後でねー!」

と…。美紀は少し顔を赤く染めながら教室を出ていった。

ふと、響の方を見ると響はうつむいている…。

「…響、もしかして泣いてるの…?」

「………………」

私がそう聞いても響は返事もうなずいたりも…なんにも応答をしてくれない。

「響…?」

私が名前を呼びながら響の顔を覗き込むように動くと響は私を一瞬で胸元で覆った…。

「…っ!……僕の顔、今ものすごく酷い…から…見ないでほしい……」

『…ほ、本当に泣いていたんだ……』

とりあえず響を落ち着かせないと…そう思った私は響の背中をさすりながら

「響…私、どんな顔でも大好きだから、これだけは知っておいてほしい……どんなことがあってもこれからは響を支えるし、愛していきたい…そう思ってるから…だから早く笑って。私、響の笑顔一番好きだからさ……だから笑って…ね……」

私が響を慰めようとしてたはずなのに私自身が慰められている気がする…。

「……うん…」

私はそっとうなずきながら一筋、涙を流したのだった。
しばらくして私は落ち着き、この告白が現実ということがわかってきたぐらいのころ…私は一つ、気になったことがある……。

「……あのー、響…」

「ん?どうしたの…」

「い、いつまで抱きついてるの…」

「…え?!…あ、ごめん…嫌だったよね……」

「私、全然嫌じゃないよ。むしろもっと大好きが増えて……なんというかさ…ずーっと近くで感じていたいくらいの心地よさな感じで…」

「ふふっ、なに、その言い方w…まぁでも、僕だってそんな感じなんだよ…」

「…え?!」

「だって僕、翠ちゃんのことを好きで告白したんだしさー…あ!!そういえばさ、翠ちゃんから、本当に好きって、大好きって聞いてないや。だから、言ってほしい……ダメ…かなぁ…?」

「…い、いいよ……」

「やったーー!!ありがとー!」

「…好き……だよ……」

「んっ、もう一回お願い。聞こえなかったから…」

「えー、こんな距離で聞こえなかったの?…だから……好き、大好きだよ…」

「いぇーい!!これで両思いだ!よっしゃ~!」

「…そ、そんなに嬉しいことなの?!……響が嬉しいし、楽しければそれでいいよ」

『…そのー………私自身も響と付き合えて良かったって心からそう思って浮かれてるなんて…そんなことを響に知られたら恥ずかしさで死んじゃう……もうすでに恥ずかしくて心臓がうるさいんだけどね………』