好きと言えなくて

それからしばらくして私は工場を辞めた。






そして7年後。今、目の前に立っているのは紛れもなく中城係長その人だった。



「中城係長…」


係長は何も言わず手を伸ばして私が取ろうとしていた本を取ってくれた。



「この本でいい?」

「あ、はい。ありがとうございます」




まさかこんな所で係長と再会するなんて。




「ホント懐かしいな。今時間ある?お茶でも飲みながら話さないか?」

「え?はい、大丈夫です…」




そう言うと私は突然の誘いにドキドキしながらレジで本の代金を支払って係長と近くの喫茶店に向かった。