華やかなパーティー会場に番号が書かれた名札を付けている男女が集う。
みなタブレット端末を持って椅子だけが円状に置かれ、男女が1対1で会話をしている。
「恵さんとおっしゃるんですね」
「はい」
「休みの日は何されているんですか?」
「休みの日は・・・」
先程から同じ会話の連続、ベルトコンベヤーのように次々に流れてくる男たち。
みんなタブレットと私の顔を交互に見ながら話している。
面接じゃないんだからと苦笑する私の名前は飯島恵。
「近くにお気に入りのカフェがあって、そこでゆっくりしています。そこは本屋さんもついているので、新作の本が読み放題なんです」
だんだんと同じ質問が繰り返されることによって、話す内容がスラスラ出てくるようになった。
英会話もこうやってやれば上達するかもなんて思ったりする。
とにかく勝負の3分間。
今、私は婚活パーティーに来ている。
しかし失敗した。
『20代30代の婚活パーティー』というものに参加した私はもうすぐ33歳。
しかし全員との会話が終わって周りを見渡すとどう見ても20代の若い男女が15組程、1組ずつ向かい合って座っている。
ふと前を見るとタブレットを凝視している男が。
私は、タブレットを見た。
『お相手のプロフィール』と書かれた画面の年齢の箇所には25歳と書かれていた。
30代なんて私だけかもしれない。
最近の子って、こんな早くから婚活するの?
もっと遊びなさいよ!20代なんだから!
だからこっちに回ってこないのかとはっとした。
ヒールのコツコツなる音がして、顔をあげる。
真ん中に黒いスーツを着たスタッフの女性がマイクを左手に持ち立った。
「みなさま、お待たせいたしました!本日はなんと、5組のカップルが誕生しました」
女性スタッフは右手を大きくパーの状態で開いた後、大袈裟に体を揺らしながら拍手をする。
会場内からも拍手が起こる。
私も背筋を伸ばしながら、ゆっくり拍手した。
女性スタッフが大きく息を吸い、とびっきりの笑顔でマイクに向かった。
「本日カップルになられた方の番号を読み上げます。男性2番さん、女性10番さん、おめでとうございます!」
再び拍手が起こった。
私も一応、拍手をする。
「続きまして、男性7番さん、女性1番さん……」
こうやって次々に番号が呼ばれていく。
私は自分のプロフィール画面をじっと見つめる。
飯村恵、33歳。高卒。ブライダル関係の仕事。
番号欄には『15』と太字で書かれてる。
「最後のカップルは男性、15番さん」
私は思わず、目の前にいる男を見てしまった。
「女性は9番さんです」
男の名札には私と同じ15番と書かれていた。
私のタブレット画面は黒くなる。
節電モードか。
私はそのままの状態でぼーっとしていた。
「では、男性から先にご退出となります。カップルになられた方は1階でお待ちください。本日はありがとうございました」
女性スタッフがお辞儀したと同時に男性たちが立ち上がりエレベーターの方へ向かっていく。
階段の方へ向かう人たちもいて、きっと階段組は番号が呼ばれなかったのだろうと勝手ながら思った。
きっと私ならそうするから。
その場から早く立ち去りたい気持ちはなんとなくわかる。
男性がぞろぞろ出ていく中、遅れて目の前の15番の男が私に会釈をした。
私も作り笑顔で会釈をする。
さすがカップリングした男、余裕があるじゃねぇか。
最後の男性たちがエレベーターで降りて行ったのを見送るとその場には女性のみが残った。
私はスマホを見た。
『8:30』と表示されている。
女性スタッフが再び大きく息を吸って、マイクに向かって話し出す。
「女性の方に特別なご案内がございます。本日、次の21時の回へのご招待を行っております。大人の魅力が素敵!年上男性編です。年上男性に憧れる女性、お待ちしております」
女性スタッフは笑顔で会場内を見渡し、うんうんとうなづく。
「まだ若干、お席に余裕がございます。ご興味がある方は後程、私にお申し付けください。本日はありがとうございました」
女性スタッフは、さっきと同じように再び頭を下げた。
私はすぐに帰る準備をして、立ち上がった。
女性たちは準備が早い。
エレベーターから一番遠かった私は出遅れてしまった。
入口が混雑している。
ふと女性スタッフの方を見るとそのそばで女性たちが数名チラシのようなものを見ていた。
私は女性スタッフの方へ向かう。
「次の回の詳細教えてもらえますか」
「はい!こちらになります」
女性スタッフは笑顔でチラシを渡す。
「予約はすぐできます。お名前教えていただけますか?」
私はチラシを見た。
そこには『男性:50代・60代』と書かれている。
「やっぱり、大丈夫です」
私は笑顔でチラシを女性スタッフに渡した。
うまく笑えていた自信はない。
みなタブレット端末を持って椅子だけが円状に置かれ、男女が1対1で会話をしている。
「恵さんとおっしゃるんですね」
「はい」
「休みの日は何されているんですか?」
「休みの日は・・・」
先程から同じ会話の連続、ベルトコンベヤーのように次々に流れてくる男たち。
みんなタブレットと私の顔を交互に見ながら話している。
面接じゃないんだからと苦笑する私の名前は飯島恵。
「近くにお気に入りのカフェがあって、そこでゆっくりしています。そこは本屋さんもついているので、新作の本が読み放題なんです」
だんだんと同じ質問が繰り返されることによって、話す内容がスラスラ出てくるようになった。
英会話もこうやってやれば上達するかもなんて思ったりする。
とにかく勝負の3分間。
今、私は婚活パーティーに来ている。
しかし失敗した。
『20代30代の婚活パーティー』というものに参加した私はもうすぐ33歳。
しかし全員との会話が終わって周りを見渡すとどう見ても20代の若い男女が15組程、1組ずつ向かい合って座っている。
ふと前を見るとタブレットを凝視している男が。
私は、タブレットを見た。
『お相手のプロフィール』と書かれた画面の年齢の箇所には25歳と書かれていた。
30代なんて私だけかもしれない。
最近の子って、こんな早くから婚活するの?
もっと遊びなさいよ!20代なんだから!
だからこっちに回ってこないのかとはっとした。
ヒールのコツコツなる音がして、顔をあげる。
真ん中に黒いスーツを着たスタッフの女性がマイクを左手に持ち立った。
「みなさま、お待たせいたしました!本日はなんと、5組のカップルが誕生しました」
女性スタッフは右手を大きくパーの状態で開いた後、大袈裟に体を揺らしながら拍手をする。
会場内からも拍手が起こる。
私も背筋を伸ばしながら、ゆっくり拍手した。
女性スタッフが大きく息を吸い、とびっきりの笑顔でマイクに向かった。
「本日カップルになられた方の番号を読み上げます。男性2番さん、女性10番さん、おめでとうございます!」
再び拍手が起こった。
私も一応、拍手をする。
「続きまして、男性7番さん、女性1番さん……」
こうやって次々に番号が呼ばれていく。
私は自分のプロフィール画面をじっと見つめる。
飯村恵、33歳。高卒。ブライダル関係の仕事。
番号欄には『15』と太字で書かれてる。
「最後のカップルは男性、15番さん」
私は思わず、目の前にいる男を見てしまった。
「女性は9番さんです」
男の名札には私と同じ15番と書かれていた。
私のタブレット画面は黒くなる。
節電モードか。
私はそのままの状態でぼーっとしていた。
「では、男性から先にご退出となります。カップルになられた方は1階でお待ちください。本日はありがとうございました」
女性スタッフがお辞儀したと同時に男性たちが立ち上がりエレベーターの方へ向かっていく。
階段の方へ向かう人たちもいて、きっと階段組は番号が呼ばれなかったのだろうと勝手ながら思った。
きっと私ならそうするから。
その場から早く立ち去りたい気持ちはなんとなくわかる。
男性がぞろぞろ出ていく中、遅れて目の前の15番の男が私に会釈をした。
私も作り笑顔で会釈をする。
さすがカップリングした男、余裕があるじゃねぇか。
最後の男性たちがエレベーターで降りて行ったのを見送るとその場には女性のみが残った。
私はスマホを見た。
『8:30』と表示されている。
女性スタッフが再び大きく息を吸って、マイクに向かって話し出す。
「女性の方に特別なご案内がございます。本日、次の21時の回へのご招待を行っております。大人の魅力が素敵!年上男性編です。年上男性に憧れる女性、お待ちしております」
女性スタッフは笑顔で会場内を見渡し、うんうんとうなづく。
「まだ若干、お席に余裕がございます。ご興味がある方は後程、私にお申し付けください。本日はありがとうございました」
女性スタッフは、さっきと同じように再び頭を下げた。
私はすぐに帰る準備をして、立ち上がった。
女性たちは準備が早い。
エレベーターから一番遠かった私は出遅れてしまった。
入口が混雑している。
ふと女性スタッフの方を見るとそのそばで女性たちが数名チラシのようなものを見ていた。
私は女性スタッフの方へ向かう。
「次の回の詳細教えてもらえますか」
「はい!こちらになります」
女性スタッフは笑顔でチラシを渡す。
「予約はすぐできます。お名前教えていただけますか?」
私はチラシを見た。
そこには『男性:50代・60代』と書かれている。
「やっぱり、大丈夫です」
私は笑顔でチラシを女性スタッフに渡した。
うまく笑えていた自信はない。