絶望のち愛

昨日の夕方、うとうとしていたところに、
主治医が入ってきた。

「あっ、内堀先生、お世話になります。まゆは、寝ちゃってて。」

起きてるし。と、思ったが、起きてても、寝てても同じなので黙って目をつむったまま。


「こんにちは。まゆちゃんは、どんな感じですか?」

「なにも。食べないし、しゃべらないです。大声で叫ぶことはなくなりましたが。今日は、お友だちがお見舞いに来てくれたんですけど、追い返しちゃって。」

「今は、大きな怪我をして、まだ混乱状態なのでしょうね?」

「先生、まゆは、また、バレー出来ますか?あの子には、バレーしかないんですよ。夢はインカレ優勝して、社会人チームに入って、全日本の試合に出ることなんです。」

「そんなに、強い選手だったんですね。」

「小さい頃から、背が高くて、バレー始めるまでは、その事をコンプレックスに思っていたようで、いじめられたり、ひきこもりそうになったりしてましたが、
お友だちに誘われてバレーを始めて、すごく変わったんです。積極的になったし、お友だちもたくさんできました。
今回は、インカレの決勝の前日に事故にあってしまったけど、治ったらまたバレーをすると思うので。」

「バレーですかー。レントゲンで初日にご説明しましたが、右足の骨折が、結構ひどくて、手術はしましたが、完全に元通りになるかは、微妙ですね。リハビリすれば、もちろん歩いたり、走ったりは出来ます。でも、全日本の選手になれるまで回復するかは、頑張り次第というか、なかなか難しいというか。」

「そーなんですね。まゆには、どーやって言ってあげればいいか」

やっぱり、看護師さんたちがいってたことは、ほんとだったんだ。

「リハビリの先生にも伝えておきます。少しでも、もとに戻れるように、リハビリ頑張ってもらいましょう。それには、まず、食事を採ってもらえるように援助しないとですね。私も、できるだけ寄り添いたいと思います。」

「はい。ありがとうございます。よろしくお願いします。」