私が小学3年生の頃、母と出掛けた先で風船を貰い、あることを思い付いた。

この風船に手紙をつけて飛ばしたら、どこまで飛んで行くのだろう?と。

風船を自分の部屋に飾っておいても、すぐにしぼんでしまうことは、既に知っていた。

だからこそ、風船のガスが抜ける前に試してみたかったのだ。

「あんまり期待しないほうがいいよ?」

歳の離れた姉はそう言ったけれど、幼い私は、遥か彼方の誰かが、この手紙を拾って返事をくれるはず…そう信じて疑わなかった。

手紙を結びつけた風船がするりと手を離れ、大空へと舞い上がってくシーンは、今でも瞼の裏に焼き付いている。

幼い夢は、天に通じたのだろうか。

数週間後、私のもとに見知らぬ誰かから手紙が届いた。