***


「はぁーっ、終わったぁ」


 エンドロールがこれほど嬉しいことはなかった。

 照明のついた映画館の中を、ひとびとがぞろぞろと出ていく。

 浅田は立ち上がって伸びをした。

 だけど、あたしは。


「先輩?」

「あ、うん、大丈夫」


 立ち上がろうとして、よろめいてしまった。


「先輩っ!」


 そんなあたしを浅田が支えてくれる。


「っ! 浅田っ」

「ごめん」

「え?」


 なんで、あんたがそんなうなだれてるわけ??


「オレが誘ったのに」


 いや、あたし。
 この映画、観たかったのは、あたし!!


「それに……」



 浅田は、耳まで真っ赤にしていた。

「手を握っていたくて、いつまでも先輩を付き合わせちゃったから……」


 あ。


「ごめんなさい。本当は、先輩がとっくにこの映画見たくないって気がついていたのに……」


 浅田。

 あたしのこと、ちゃんと見てる。

 のに。

 ちょぉっと、おしいんだよねぇ。


「いいよ、そんなの」

「先輩?」

「好きな俳優さんが悲鳴あげてるとこ、見れたし」


 それに。


 きみと手を繋ぐってのが、こんなにも安心するんだって、知った。


 浅田のいろんなとこ、知れたから。