「ねーぇ?妊娠してるのにー、他人の世話なんて大変なのねぇ」

「あの、愛奈さん。ここ職場なんですけど……」


数日後──、愛奈さんが職場(大学病院)までやってきた。
患者さんの食事をワゴンにから取り出して配食してると、後ろからじっと視線を向けてくるから凄くやりにくい。



「うふふー、大丈夫よ!病院長には許可取ったもの。将来働くかもしれない研究室の病院見学よ、見学!」

「……」


えー、中には愛奈さんに見とれてるお爺ちゃんもいるけど、不審がってる人もちらほら。
真木ちゃんも向こうのフロアからガン見して心配してるし。

これから、食事介助が入るから危ないし困るんだけど。



「鴨田さん、こっちはいいからラバー片付けてきて」

「あ、はいっ」


いつも厳しい看護部長も半分飽きれ気味。
でも、愛奈さんを注意しないのは、上から何か言われたのだろうな。

ラバーの入ったワゴンを押して病棟の廊下を歩けば、その後ろに彼女がついて来る。

通り過ぎる職員が振り返って、愛奈さんの姿を2度見していくんだけど。
ヒールの入った足音が響くし、本当に場違い!この人、綺麗過ぎて目立ち過ぎる!