「愛奈はさ、俺の1つ下で国立✕✕大学の薬学部の5年生なんだよ。大学病院の研究室の北川教授の孫娘でさ……」

「えぇ!?あんなに大人っぽいのに春多くんより年下?しかも私でも知ってる凄い大学じゃん」


愛奈さんをなんとか追い出した後、春多くんが彼女について説明をしてくれる。



「そうだよ。だから、珠里さんが敬語なんて使う必要ないんだよ」

「だって、お姉さんっていうから……ふがっ、」


私を後ろから抱き締めるように座る春多くんが、鼻を摘まんできた。
あんなに人を家に上げるなと言ってたのに、勝手に入れてしまった私も悪いから……仕方がないけど。



「あんたは騙されやす過ぎ。マジ気を付けろよ」

「はい、ごめんなさい」


シュンと謝れば、春多くんが今度は甘えるように首元にスリスリしてくるから、ちょっとくすぐったい。



「ごめんな。婚約者の話は前に出てたのに、ちゃんと説明してなくてさ」

「私もすっかり忘れてたから」

「……へー…忘れてたんだ?。まぁアイツはさ、幼い頃から優秀な子孫を残すように言われてるらしくて。なんか知らないけど、俺が第1候補に上がってるんだよな。他にももっと候補いる筈なのにさー」

「それって、もしかして。本当は春多くんが好きとか?」

「いやそれはないだろ。断言できる。あいつからは一切愛情を感じられないし。俺を指定してくんのは、俺への嫌がらせとしか思えねーよ」