「モテるけどさー、全然続かなかったですね。忙しくて彼女と時間が合わなかったり、振られるか浮気されるらしくてさ」


そっか、そうだよね。院長の孫って肩書きだけでもハイスペックになるんだよね。
最初は性格最悪だって思ったけど優しいし、顔だって結構かわ……

「あと……それに。春多は色々とあるから大変でしょ?」

「え?」

「すっげー綺麗な婚約者。会ったことないっすか?そう考えると、上手いことやったよなぁ」

「こん、やくしゃ?」


ポカンと首を傾げれば、和泉くんの顔がサーッと一気に青くなっていく。



「……まさか、知らないん??やべっ。いや、でも……春多その婚約者のこと嫌ってるし、大丈夫ですよ!もう、既成事実つくっちゃったし、ね?」

「……」

「余計な事言ってすみません。でも、春多があの家に誰かを住まわすなんて地球がひっくり返るくらいに奇跡だし、めちゃくちゃ大切にされて愛されてる証拠ですよ!」







「……あ、和泉くんはあの部屋知ってる?」

「えっ、あの部屋?あー、あの部屋ね。今、どうなってるんですか?」


あ、和泉くんって子は"あの部屋"のこと知ってるんだ。
深刻そうな顔をして声のトーンを下げるから、私も彼を真似て真面目な表情を見せた。



「……うん、そのまんまだよ」

「まぁ、そうだよな。片付けられないですよね、あの部屋は。春多もキツいよな、────を人質に取られてるようなものだし」