「でも、鴨田さんって旦那さんが誰だとか話さないじゃない?それってあやしくない?」


「訳あって言えない相手だけど……香川先生じゃないし。鴨ちゃんの旦那さんの変な噂流さないで下さいよー!」


真木ちゃん、それ新たな誤解生まれそうだから。
体に力が入らなくて、真木ちゃんを止めに行くことも出来ない。




「そろそろ、朝のミーティング始まりますよーて、……鴨田さん!?ちょっと大丈夫?」


後ろから看護部長の驚いた声が聞こえた。と同時に、スーッと目の前が真っ暗になっていく。








「……………さん、珠里さん!」


おかしいな、春多くんの声が聞こえた気がして、ふわりと身体が宙に浮いた。



「……い、大丈夫かよ」


誰かの腕の中。私はこの香りを知っている。穏やかな気持ちになれる、大好きな香り。


フッと目蓋を開けた時、1番に視界に入ってきたのは──。





「あ、目、覚めた……」

「な、なんで、春多くんが……?」

「今日、あんたの病棟に回診するとこだったんだよ。そしたら妊婦が倒れたっていうから、まさかと思ったらさ。あんただった」


回りを見渡すと、病棟の休憩室の仮眠用ベッドの上に横になっていた。



「すっげー、偶然だよな」


私、急に気分が悪くなって、あのまま倒れたんだ。
慌ててパッと両手をお腹に当てた。赤ちゃんって、大丈夫なの?