「香川先生、不倫してるっぽいよー」

「えっ??」

「私、奥さんぽい人に突然SNSフォローされたんだけど。覗いたら、なんか、匂わせてる感じでさ」

「えー、他の病棟の人も奥さんぽい人にフォローされたって言ってたよ」

「それって、相手、病院関係の人ってこと?ヤバくない?」


ドアノブに伸ばした手を止める。
職場に出勤して休憩室の扉を開けようとした時、同僚の人達の話が聞こえてきた。



「どれどれ?見せてー。うわ、まんま香川先生じゃん」

「違うとは思うんだけどさ。ほら見てよ、このアパートのドアに写ってる女の人、鴨田さんと雰囲気似てない?」

「ほんとだー、似てる」

「私も思った!鴨田さんのお腹の子供ってさ、もしかして──」



ドクン、心臓が止まるかと思った。








「それ鴨ちゃんじゃないですよー。私、旦那さんに会いましたもん!!」


次に真木ちゃんの声が続くのが耳に入った。
ドクン、ドクン、心臓の音が体中に震えるように響き渡る。



「でもさー、これ鴨田さんにしか見えなくない?」

「鴨ちゃんの旦那は可愛い系の今時イケメンでしたよ!だから、全っ然、違う人ですよ!」


おもしろ可笑しく繰り広げられる会話に、真木ちゃんの声のトーンが怒っているのが伝わってきた。

背中に冷たい汗が流れる。頭がクラクラする。足元がグラついて、その場にしゃがみ込んだ。