「んなっ……、」


こんな道端で、しかも自分の友達の前で何言っちゃってんの??



「はぁ、春多も相変わらずだよな。珠里さんだっけ?こいつの外面(そとづら)と計算高さには気を付けて下さいねー」

「珠里さんとか、気安く名前呼ぶなよ、俺の彼女に」

「はいはい、分かったよ。春多の彼女さんねー」


さっきから、ずっと後ろから抱き締められて、首元にリップ音をたてながらキスを何度もされてるんだけど。普通、友達の前でこんなことする──?



***




「ねぇ、恥ずかしくないの?」

「何が?」


和泉くんって子と別れた後も、まだ頬の火照りが治まらない。



「だって、だから……。友達の前であんな……ギュッとかキ、キスとか…」

「あんたと俺はラブラブな恋人同士なんだから、普通だろ?」

「……」


春多くんが平然と口にするから、一瞬、世間の常識を勘違いしそうになる。いや、私は間違っていない筈。



「なんだよ、ほら、役所で俺等の書類と母子手帳貰いに行くんだろ?」


完全に元の雰囲気に戻った春多くんが、私に手を差し出した。





──赤ちゃんすくすく育ってますね



診察の時の女医さんの言葉が脳裏に思い浮かぶ。
この子のことは、よく分からないし、まだ理解できないけど。私だって、守らなきゃいけないものがある。



「……うん、行こっか!」


もう、私は、この大きな手を掴んで進むって決めたんだから。