「そうだよねぇ。独身のドクター、若い人いないもんねぇ」


俊也さんの顔が脳裏に浮かんで、頭を小さく横に振る。
あんな別れ方をしたのに、彼からのメッセージは昨日から今日にかけて1つも無かったのだ。
もう、忘れなきゃ。




「そうだ、職場には報告しにくい?シフト一緒の時はフォローするけど、看護部長には言っといた方がいいんじゃない?」


真木ちゃんの言葉で一気に現実に引き戻される。


「あ、うん。そうだよね」

「一端、パートになるか、養ってもらったら?」


ニヒヒと、彼女が笑うけど。あの子はまだ学生だ。養って貰えるわけがない。

体調の事を考えると、妊娠中の夜勤は厳しいと思う。部長に相談すれば夜勤の回数減らしては貰えるだろうけど、ゼロにはならない。

同僚が妊娠した時も一端パートになって、復帰してから正社員に戻る事が多い……気がする。

パートになると手取りは減るし、保険も外されるし、生活が厳しくなるのは確実だ。
でも、光熱費も含めて住むところだけはあるから、貯金を上手く崩していけば1、2年は大丈夫かもしれない。