大学病院近くの25階立ての高層マンション。
下から見上げて、あまりの高さに目眩がした。

建物自体は見たことはあったけど、自分とは無縁なモノだと思っていた。


エントランスは木製の両開き扉で、中に入るとボタン式のオートロックが設置されている。男の子が慣れた手付きでロックを解除していく。



「なぁ、荷物これだけ?女にしては少なくね?」


大きなボストンバックと紙袋1つを手に持つ男の子が私に視線を向ける。
あそこを出なくちゃいけない私に、こいつは"家《うち》おいで"と言ってくれた。



アパート(あそこ)の前は寮暮らしだったし、余計なものは買わない主義なの」

「ふーん」


あんまり興味なそうに相づちを打って、エレベーターに乗り込むから、私も慌ててその後についた。

俊也さんのアパートに住み続ける訳にもいかないし、寮にも戻りにくい。だからといって、お金に余裕があるわけでもないから、遠慮無く住まわせて貰うけど。

世の中はなんて不平等なんだろうか。
チーン、と音を立ててエレベーターの扉が開いた先は、13階の3LDK。

大学病院の偉い人の孫だからといっても、まだスネかじりの学生のくせにありえない。