──約1ヶ月前──



「聞いた?ICUの山田さん妊娠したっぽくて、夜勤出来ないからパートになるんだって」

「この間実習きてた子の中に院長の息子がいたんだって…誰だか分かった?」

「2階フロアの鈴木さん、武井先生と結婚するって。看護師と医者かー、理想結婚過ぎるんだけど」

「今日の病棟診察、香山先生じゃん。やった!イケメンだしうちらに怒らないし」

「そうそう、この間さー。香山先生の奥さんが…………」








「はい、そこ。私語つつしみなさい。朝のミーティング始まりますよ」


休憩室での黄色い噂話は、看護部長の声とパンパンと手を叩く音で一端終了。

ナースステーションに看護師、介護士が集まって申し送りがはじまって。患者の状態、本日の予定を看護部長がテキパキとミーティングを進めていった。



「先生の病棟診察が午後からあります。よろしくお願いしますね」

「「お願いします」」


挨拶と同時に職員が部屋からパラパラと散って、各自の仕事に入っていく。



鴨田(かもた)珠里(じゅり)28歳。大学病院の入院病棟で介護士として働いている。

主に業務は食事介助とトイレ介助とお風呂介助とその他もろもろ雑用。給料と肉体労働時間が合っていない、と不満に思う日々。

あー、腰が痛い。トントンと自身の腰を叩いた。