「あとで、連絡する」



俊也さんはそう言い残して、取り残されたのは私と男の子の2人。

そして、なぜか私の部屋で床上に向かい合って座っている。私の部屋といっても、俊也さん名義のアパートだけど。



「で、産まれんのいつだって?」

「…………2月、」

「ふーん。で、香川の子?俺の子?どっち?」

「…………わ、分かんない。でも、あなたの子ではない」

「俺の可能性もあるだろ?」

「違うっ!分かるもん!あなただけは無いって、私の勘が、言ってるも……ううっ」


駄目だ。涙が崩壊したように溢れて、"堕胎"という単語が頭の中をぐるぐると回っている。



「まぁ、落ち着けって」

「……っく、ううぇ。私、捨てっ……捨てられるん…うう」

「俺さ、あの日、可愛いお姉さんに拾われて気分が上がってたんだ」


いつの間にか、男の子の腕の中にすっぽり抱き締められていた。
大きくて、優しくて、温かい胸。この子のシャツが私の涙で濡れていく。

おかしいな。この匂い、どこかで嗅いだことある。



「俺だって、誘われれば、誰でもいーわけじゃねーんだよ」

「……」


耳元で囁かれる低い声にも、聞き覚えがあった。髪を梳かすように優しく撫でる手、見た目よりずっと固い胸元に、柔らかい唇──。


確かに、私はソレを覚えている。