――数日後。


帰り道を1人で歩いていると、ふと誰かに声を掛けられたような気がした。

思わず振り返ると、少し離れたところに女性が立っていた。

小柄だけれど、すらっとしてスタイルが良い。

その綺麗な目で、真っ直ぐ俺を見ているのが分かった。


俺はそれに惹かれるように、彼女の方へ歩み寄った。

見惚れたとか、そういうことじゃない。

なんだか独特の雰囲気というか、オーラを感じるのだ。

おぼつかない足取りで女性のいる方へ行くと、彼女はにっこりと微笑み返してくれた。

「こんにちは」

「あの……」


何から聞けば良いのだろう。


――どうしたのですか?


――あなたは誰ですか?


――どうして俺を呼んだんですか?


「こんにちは」

女性は笑顔のまま、もう一度言った。

「こ、こんにちは。あの……俺に、声、掛けましたよね」

「ええ、そうですよ」

「あの……」

「あっ、申し遅れました。私、死者の心分析事務所の黒田と申します」

「ああ、どうも……」

亮がいなくなって、心が塞がって部屋にこもることも多かった俺は、誰かと面と向かって会話するなんて久しぶりのことだった。

そのせいか、どこを見て話したら良いのかも分からない。