「そうかっ…。もしかしたら俺たち、その失くした記憶の中で、すでに出会ってたかもしれねぇな」

「もしそうなら、びっくりだよね。…でも、そうだったらいいのにな」


一之瀬くんとは、偶然にも失くした記憶の期間も一致する。


そう考えると、なんだか一之瀬くんの言うことが、本当にそうなんじゃないかと思えてしまう。


そんなことあるわけないけど――。

その失くした過去の記憶の中でも、一之瀬くんといっしょだったらいいな。


だけど、わたしたちが過去も現在も結ばれることは許されない。

なぜなら、わたしには万里くんがいるから。


だから、ちゃんと伝えなくてはならない。

これまでずっと抱えていた…わたしの思いを。



その日、わたしは久々に万里くんに電話をかけた。


結局、キスを拒んでしまってから、まともに連絡を取っていなかった。