「やった! 模試、終わった〜」

 そうだ、朝一で模試がある理由が分かったよ。
 テストなんてさっさと終わらせた方がキャンプを楽しめるもんね。

 上級生に手伝ってもらって大きなテントを張ったの。
 五〜六人で泊まれるテントは中が広くて快適快適。
 くじ引きで偶然仲良しの絵麻ちゃんとグループになれたしすごくラッキーだよ私。

 日中は冷たくて気持ちいい清流で川遊びを楽しんだりスイカ割り、銀星と絵麻ちゃんと川辺を散策したり。
 お昼は飯盒で炊いた御飯でおむすびを作って食べたんだ。お焦げがあって香ばしくってとっても美味しかったよ。

 夕方になると中学校の周りに妖怪達が遊びに来ているのが見えた。
 豆腐小僧や山彦、提灯小僧にぬりかべの子供、山わろに一つ目小僧や泥田坊に木の葉天狗にすねこすりに化け草履。
 わ〜、いっぱい居るぅ。
 中学校の校庭キャンプの楽しい雰囲気に集まってきたのかな?
 可愛いあやかし、大人しい妖怪が多い。

 妖怪達は警戒してか中学校には入っては来ない。
 妖怪達は一様に茨木先輩に視線がいってた。鬼の圧を感じてるのかな。

 いつか妖怪のみんなともキャンプしたいね。


 晩御飯は大きい鍋でカレーを作る。
 キャンプといえばカレーだよね。
 私はひたすらじゃがいもの皮を剥く係だった。横にいる銀星はポロポロ涙を流しながら玉ねぎを切っていく。

「雪華、楽しい?」
「うん、楽しいよ! 銀星は?」
「もちろん楽しい。雪華とこうしていられるだけで僕は嬉しいからさ」
「そっかぁ。私も嬉しいよ。絵麻ちゃんと銀星とキャンプ出来て」
「僕、二番目なのか? 冴草さんの次? 所詮僕は雪華には二番?」
「なんか言った銀星?」
「い、いや、ううん。なんにも」

 変なの。
 銀星はちょっとふてくされた顔してる。

「銀星は手際が良いね、上手だよ。今度一緒に料理しようよ」
「ありがと。雪華と料理するのも楽しそうだね」

 お喋りしてたら銀星はすぐに機嫌が戻った。まるで百面相。
 銀星はこういうトコ可愛い。
 もふもふ子狐姿になったらまた撫で撫でさせてもらおうっと。

 カレーを煮込むのと御飯が炊けるまでの時間で肝試しが行われることになった。
 やだ〜、怖いから私はパスしたい。足が震えてくる。

「生徒会より連絡事項です。校内肝試し大会は折り返し地点の校長室に全員分のデザートを用意してあるので必ずご参加くださーい。準備が出来た生徒から昇降口にお集まりください」

 茨木先輩が拡声マイクで校内肝試し大会の案内をすると校庭にいる生徒達が湧いた。
 デザートは気になるけど肝試しはイヤだよ。

 夕暮れを迎えた学校の校舎内は不気味に決まってる。
 本物の幽霊が出そう。
 ガタガタと震えが増して怖さが襲って来る。
 怖い妖怪にだって出くわしてきたけどやっぱり幽霊は苦手だよ。