「ちょおぉっと待ったあぁっっ!!!」
木陰の下のベンチでキス寸前の私と茨木先輩はベリベリベリッと引き剥がされた。
「銀星っ!?」
「やれやれ。銀星くん、やはり君はとんでもない奴だね。俺と雪華さんの甘い空気をその優秀なる神狐の鼻で嗅ぎつけてきたのか」
ゼーハーゼーハーと肩を上下させ荒く息をする銀星。
銀星は必死の形相で顔は真っ赤だし汗だくだ。
全速力で駆けつけてきたんだね。
「あれ? 稲荷神社の用事で海岸に行ったんじゃなかったの?」
「行ったよ。ついさっき僕は嫌な予感がしたんだ。胸騒ぎがゾゾッとした。用事なんて速攻で終わらせて来たっ! 雪華、無事っ!? 無事だよねっ?」
「ぶ、無事だよ。……って何が?」
「茨木先輩にまた迫られたんだろ?」
「銀星くん。まあまあ安心したまえ。俺は雪華さんのファーストキスはまたもや奪えなかった。君のせいで雪華さんとの甘い口づけはまたお預けだよ。しかし変だな。今日は美鬼の魅惑の妖術のかかりが悪かったな。疲れてるような。そうか、体の調子が悪いのかも。俺はここで失礼するよ」
茨木先輩はカッコつけて颯爽と帰って行く。これが漫画だったらその背中には散る薔薇の花びらが見えるんだろうな。
なんて空想しちゃった。
「もう雪華は! 僕が茨木先輩には散々気をつけてねって念を押したじゃないか」
「私はね、茨木先輩ってそんなに悪い人じゃないと思うよ。あっ、人じゃなくて鬼か」
「いい、雪華? 男は皆オオカミだ、猛獣だ。雪華は可愛いし稀有《けう》な存在なんだよ。茨木先輩は雪華を甘い言葉で騙してるんだ絶対。あー、祓い札で作った式神を雪華の頭上に飛ばしといて良かった。茨木先輩が雪華に掛けようとした美鬼の妖術を少しは防いだだろ?」
「ああ、そういや今日は茨木先輩に手を握られてもあんまり頭がポーッとしなかったかも」
「ぬぁにぃ。あの鬼め雪華の手まで握ったのかぁぁ」
マ、マズイ。銀星の顔は青筋が立って怒り心頭噴火寸前。
これ以上銀星のお小言が爆発しないうちに私は隙を見て逃げることにいたします。
「雪華は悪くない。悪いのは茨木先輩だ。さあ、雪華帰ろうよ。雪華?」
ごめん銀星。
心配してくれるのは分かってるんだけど。
私だって自由が欲しいの。
私は銀星に見つからない様に風神神社の小さなお社の後ろに隠れてみる。
どうせ鼻の利く銀星にはすぐ見つかっちゃいそうだけど。
「あーっ、銀星くんやないの。久しぶりやね。元気やった? 雪華はどないしたがね。いつでも二人は相変わらず仲良《なかよ》うしちょってて微笑ましい幼なじみだよね。あの子まだ来てないがか?」
こ、この声は。
まずい、バッドタイミング。
この高くて澄んだキュートな方言混じりの声は。
「久しぶり、風来美《ふくみ》ちゃん。風森町に来るなんてどうしたの?」
「私は雪華に妖怪探偵にお願いがあって依頼しに来たがよ」
声の主はパソコンや機械に強い天狗娘の風来美ちゃん。
風来美ちゃんは私達妖怪探偵に協力してくれてて情報を送ってくれたりするありがたいお友達なんだ。
私は二人の前に出て行きづらい空気になってしまってた。
「雪華とこの風神神社で待ち合わせしてたがよ」
「依頼かな?」
「そうそう! 銀星くん。私はもう恥ずかしいきに雪華に依頼内容は誰にも言っちゃぁいかんてゆうたがよ?」
私を訪ねて夏休みに遊びに来た友達は風森町からずっと遥か遠くの山里に棲む天狗の風来美ちゃん。
銀星には風来美ちゃんが来ることあんまり知られたくなかったなぁ。
だってね。
風来美ちゃんのお願い事は銀星が嫌がりそうな依頼内容だったからなの。
木陰の下のベンチでキス寸前の私と茨木先輩はベリベリベリッと引き剥がされた。
「銀星っ!?」
「やれやれ。銀星くん、やはり君はとんでもない奴だね。俺と雪華さんの甘い空気をその優秀なる神狐の鼻で嗅ぎつけてきたのか」
ゼーハーゼーハーと肩を上下させ荒く息をする銀星。
銀星は必死の形相で顔は真っ赤だし汗だくだ。
全速力で駆けつけてきたんだね。
「あれ? 稲荷神社の用事で海岸に行ったんじゃなかったの?」
「行ったよ。ついさっき僕は嫌な予感がしたんだ。胸騒ぎがゾゾッとした。用事なんて速攻で終わらせて来たっ! 雪華、無事っ!? 無事だよねっ?」
「ぶ、無事だよ。……って何が?」
「茨木先輩にまた迫られたんだろ?」
「銀星くん。まあまあ安心したまえ。俺は雪華さんのファーストキスはまたもや奪えなかった。君のせいで雪華さんとの甘い口づけはまたお預けだよ。しかし変だな。今日は美鬼の魅惑の妖術のかかりが悪かったな。疲れてるような。そうか、体の調子が悪いのかも。俺はここで失礼するよ」
茨木先輩はカッコつけて颯爽と帰って行く。これが漫画だったらその背中には散る薔薇の花びらが見えるんだろうな。
なんて空想しちゃった。
「もう雪華は! 僕が茨木先輩には散々気をつけてねって念を押したじゃないか」
「私はね、茨木先輩ってそんなに悪い人じゃないと思うよ。あっ、人じゃなくて鬼か」
「いい、雪華? 男は皆オオカミだ、猛獣だ。雪華は可愛いし稀有《けう》な存在なんだよ。茨木先輩は雪華を甘い言葉で騙してるんだ絶対。あー、祓い札で作った式神を雪華の頭上に飛ばしといて良かった。茨木先輩が雪華に掛けようとした美鬼の妖術を少しは防いだだろ?」
「ああ、そういや今日は茨木先輩に手を握られてもあんまり頭がポーッとしなかったかも」
「ぬぁにぃ。あの鬼め雪華の手まで握ったのかぁぁ」
マ、マズイ。銀星の顔は青筋が立って怒り心頭噴火寸前。
これ以上銀星のお小言が爆発しないうちに私は隙を見て逃げることにいたします。
「雪華は悪くない。悪いのは茨木先輩だ。さあ、雪華帰ろうよ。雪華?」
ごめん銀星。
心配してくれるのは分かってるんだけど。
私だって自由が欲しいの。
私は銀星に見つからない様に風神神社の小さなお社の後ろに隠れてみる。
どうせ鼻の利く銀星にはすぐ見つかっちゃいそうだけど。
「あーっ、銀星くんやないの。久しぶりやね。元気やった? 雪華はどないしたがね。いつでも二人は相変わらず仲良《なかよ》うしちょってて微笑ましい幼なじみだよね。あの子まだ来てないがか?」
こ、この声は。
まずい、バッドタイミング。
この高くて澄んだキュートな方言混じりの声は。
「久しぶり、風来美《ふくみ》ちゃん。風森町に来るなんてどうしたの?」
「私は雪華に妖怪探偵にお願いがあって依頼しに来たがよ」
声の主はパソコンや機械に強い天狗娘の風来美ちゃん。
風来美ちゃんは私達妖怪探偵に協力してくれてて情報を送ってくれたりするありがたいお友達なんだ。
私は二人の前に出て行きづらい空気になってしまってた。
「雪華とこの風神神社で待ち合わせしてたがよ」
「依頼かな?」
「そうそう! 銀星くん。私はもう恥ずかしいきに雪華に依頼内容は誰にも言っちゃぁいかんてゆうたがよ?」
私を訪ねて夏休みに遊びに来た友達は風森町からずっと遥か遠くの山里に棲む天狗の風来美ちゃん。
銀星には風来美ちゃんが来ることあんまり知られたくなかったなぁ。
だってね。
風来美ちゃんのお願い事は銀星が嫌がりそうな依頼内容だったからなの。

