「いよいよ目障りになってきたから機会を伺っていたのさ」
茨木先輩はそう言うと地面に倒れた鬼婆に向かって手をかざす。
茨木先輩の手からこの間見た金棒のアクセサリーから放たれた光が鬼婆の体を包んだ。
「あっ」
私の目の前で、一瞬で鬼婆が無数の泡粒になって消えてしまいました。
「どうして、茨木先輩」
「雪華さんをまた狙ったからさ。それに魂を喰らうのなんて俺の美学に反するね」
「茨木先輩、アンタさっきの鬼婆に和平交渉の許しを得るんじゃなかったのか？」
「まぁね。鬼婆は無駄に権力を握ってたからな。せいせいしたよ。んっ？ 浮かない顔しちゃって。まさか君達むごいとか思ってないよな？ あの鬼婆は人や妖怪の魂を生きたまま喰らって数百年生きてきた正真正銘の化け物だぜ。これで雪華さんに少しは安心してもらえるだろう？」
「茨木先輩、鬼婆が私を『また狙ったから』って言いましたよね？」
「言ったよ」
私は不思議で仕方がなかったの。
だってね、ほぼ初対面の私に「俺の嫁になれ」だなんていうなんて。
私もそんなにイヤじゃなかったのは私は茨木先輩とずっと前に会って助けてもらっていたから？
「小学生の時に雪華と僕を拐おうとした妖怪が鬼婆だったのか。そしてその時僕達を助けて逃してくれたのが茨木先輩なのか？」
茨木先輩はフッと自嘲気味に笑った。銀星に真っ黒のお面を投げて寄越す。
「そのお面に見覚えがあるよね？ それは鬼婆の部屋にあった。あれから君達とは何度か遊んだけど覚えてないだろ？ 俺はずっと昔にはもう雪華さんを好きになってたんだ」
「私と銀星が茨木先輩と遊んでたの？」
私が見ると先には浮かない顔の緋勇くん。
「その事なんだがな、気を悪くすんなよ。あの時期は鬼族は危険だからって警戒してた。大人達が話し合って雪華と銀星の記憶を妖術で少し閉じてるんだ」
「「えっ！？」」
「鬼族は知恵があり賢く油断がならない。不用意に近づけばまた狙われるからな」
知らなかった。
私と銀星は茨木先輩と仲良く遊んでいたんだ。
なのにその記憶は閉じ込められている。
「俺達は結界を張って鬼が近寄れないようにした」
「でも、これから鬼族と和平交渉するんでしょ！ それなのに」
「あのな、雪華。鬼族は酒呑鬼組だけじゃないんだよ。黒い妖気は影響を拡大しつつある。さっきの鬼婆以外にも黒妖をばらまいてる奴がいると俺は見ている。雪華と銀星は随分大きくなったから。自分の身に迫る危険を知り立ち向かう力を養ってほしいんだ。これは俺達四神獣と眷属衆、お前達の父さん母さん達の願いでもある」
「そんな」
「僕と雪華の思い出、大人達は勝手に記憶を操作したの？」
「その事はごめん。謝るよ。ごめんな、雪華、銀星」
緋勇くんはしゅんっとなって。
私は大人達が守ろうとしてやった事だと分かったけどまだ受け入れられなくて。
「結界を突破出来るぐらいに俺は力をつけて人間に成りすました。やっと雪華さんを探しに来たよ」
茨木先輩は私の両手を握る。
先輩の顔がぐっと近づいてくるとなんか私は頭がポーッとしてきて頬が熱くなる。
うーん、たしかに茨木先輩はイケメンだよね。顔は整ってて、背が高くて。
美鬼の妖気は甘い香り。
「雪華さん分かったかな？ 俺の真剣な気持ち。俺だって君の幼なじみだ。俺と君は特別な絆で結ばれ……」
「ちょーっと待ったぁぁっ！！ それは僕が許さないからね」
べりべりっと音がしそうな勢いで銀星は私と茨木先輩を引き剥がした。
銀星は威嚇するように茨木先輩を睨んでから私の手を握った。
「さあ！ 行くよ、雪華。僕達妖怪探偵は凪ちゃんを助けて小河童も見つけに行くよ！」
「うん、行こう。ってちょっと銀星、歩くの速ーい」
竹林をドカドカ足音を鳴らしながら進む銀星に連れられ引っ張られて私も進む。
後ろから続く緋勇くんに茨木先輩とわん太の誰かの「やれやれ」と呟く声が聞こえた。
茨木先輩はそう言うと地面に倒れた鬼婆に向かって手をかざす。
茨木先輩の手からこの間見た金棒のアクセサリーから放たれた光が鬼婆の体を包んだ。
「あっ」
私の目の前で、一瞬で鬼婆が無数の泡粒になって消えてしまいました。
「どうして、茨木先輩」
「雪華さんをまた狙ったからさ。それに魂を喰らうのなんて俺の美学に反するね」
「茨木先輩、アンタさっきの鬼婆に和平交渉の許しを得るんじゃなかったのか？」
「まぁね。鬼婆は無駄に権力を握ってたからな。せいせいしたよ。んっ？ 浮かない顔しちゃって。まさか君達むごいとか思ってないよな？ あの鬼婆は人や妖怪の魂を生きたまま喰らって数百年生きてきた正真正銘の化け物だぜ。これで雪華さんに少しは安心してもらえるだろう？」
「茨木先輩、鬼婆が私を『また狙ったから』って言いましたよね？」
「言ったよ」
私は不思議で仕方がなかったの。
だってね、ほぼ初対面の私に「俺の嫁になれ」だなんていうなんて。
私もそんなにイヤじゃなかったのは私は茨木先輩とずっと前に会って助けてもらっていたから？
「小学生の時に雪華と僕を拐おうとした妖怪が鬼婆だったのか。そしてその時僕達を助けて逃してくれたのが茨木先輩なのか？」
茨木先輩はフッと自嘲気味に笑った。銀星に真っ黒のお面を投げて寄越す。
「そのお面に見覚えがあるよね？ それは鬼婆の部屋にあった。あれから君達とは何度か遊んだけど覚えてないだろ？ 俺はずっと昔にはもう雪華さんを好きになってたんだ」
「私と銀星が茨木先輩と遊んでたの？」
私が見ると先には浮かない顔の緋勇くん。
「その事なんだがな、気を悪くすんなよ。あの時期は鬼族は危険だからって警戒してた。大人達が話し合って雪華と銀星の記憶を妖術で少し閉じてるんだ」
「「えっ！？」」
「鬼族は知恵があり賢く油断がならない。不用意に近づけばまた狙われるからな」
知らなかった。
私と銀星は茨木先輩と仲良く遊んでいたんだ。
なのにその記憶は閉じ込められている。
「俺達は結界を張って鬼が近寄れないようにした」
「でも、これから鬼族と和平交渉するんでしょ！ それなのに」
「あのな、雪華。鬼族は酒呑鬼組だけじゃないんだよ。黒い妖気は影響を拡大しつつある。さっきの鬼婆以外にも黒妖をばらまいてる奴がいると俺は見ている。雪華と銀星は随分大きくなったから。自分の身に迫る危険を知り立ち向かう力を養ってほしいんだ。これは俺達四神獣と眷属衆、お前達の父さん母さん達の願いでもある」
「そんな」
「僕と雪華の思い出、大人達は勝手に記憶を操作したの？」
「その事はごめん。謝るよ。ごめんな、雪華、銀星」
緋勇くんはしゅんっとなって。
私は大人達が守ろうとしてやった事だと分かったけどまだ受け入れられなくて。
「結界を突破出来るぐらいに俺は力をつけて人間に成りすました。やっと雪華さんを探しに来たよ」
茨木先輩は私の両手を握る。
先輩の顔がぐっと近づいてくるとなんか私は頭がポーッとしてきて頬が熱くなる。
うーん、たしかに茨木先輩はイケメンだよね。顔は整ってて、背が高くて。
美鬼の妖気は甘い香り。
「雪華さん分かったかな？ 俺の真剣な気持ち。俺だって君の幼なじみだ。俺と君は特別な絆で結ばれ……」
「ちょーっと待ったぁぁっ！！ それは僕が許さないからね」
べりべりっと音がしそうな勢いで銀星は私と茨木先輩を引き剥がした。
銀星は威嚇するように茨木先輩を睨んでから私の手を握った。
「さあ！ 行くよ、雪華。僕達妖怪探偵は凪ちゃんを助けて小河童も見つけに行くよ！」
「うん、行こう。ってちょっと銀星、歩くの速ーい」
竹林をドカドカ足音を鳴らしながら進む銀星に連れられ引っ張られて私も進む。
後ろから続く緋勇くんに茨木先輩とわん太の誰かの「やれやれ」と呟く声が聞こえた。
