河童お屋敷を出た私達は妖怪探偵事務所に戻る事になった。
 出発〜! とか言って勢いをつけた私は肩透かしな気分。

「雪華、今日のところは帰らないとね」
「うぅっ。せっかくやる気がみなぎっているのに〜」

 時刻は午後6時を回っている。
 銀星の言う事はもっともだ。
 あんまり帰りが遅くなるとパパとママに怒られちゃう。

 私たちは河童達にお土産をたくさん風呂敷で持たされ、帰り道は大荷物だった。

 背中に小さめの風呂敷包みをくくりつけたわん太が先頭を小走りに行く。
 狛犬だから私と銀星を守る気満々なんだよね。
 その姿はどこか誇らしげで嬉しそう。
 とたとたぽてぽて一生懸命走る子犬の姿のわん太は可愛いっ。

 妖怪探偵事務所に行ったら河童から聞いた情報を元に瓢箪を盗んだ小河童の行方に見当をつけよう。
 そしたら今日は解散。

「俺は水虎宛に来たある手紙を預かっている」

 私と銀星は茨木先輩のジャケットから出された手紙を受け取る。

「ねぇ、なんて書いてあるんですか?」

 私は手紙の中身に興味津々!

「読んでみたら? 雪華さん、君にも関係があるようだからね」
「私に?」

 立ち止まってさっそく手紙を開け読んでみる。
 銀星も覗き込む。

「なななっ! 許さんっ」

 銀星が怒り出しちゃった。

 それもそのはず差出人は瓢箪を盗んだ小河童から――。

『水虎様へ
 酒呑童子の瓢箪と雪女の雪華なる者を花嫁候補として必ず差し出します。
 楽しみにお待ち下さいませ。
 それから我らの仲間になってくれる心強い者と出会いましたよ。
 いずれ追ってまた、近いうちに文を出しますよ。
 親分、待ってて下さい。
      河童里村の河三郎より』

 何よこれ!
 私の意見も気持ちもまる無視じゃない。

「もうっ、私が花嫁候補? あの時小河童が言っていた『親分が喜ぶ』って水虎のことかぁ」
「冗談じゃない。雪華は雪華の意志で相手を選ぶべきだ」
「君、分かってるじゃないか、銀星くん。そうさ、雪華さんは雪華さんが好きになった相手と結ばれるべき。俺が必ず」
「何いってんだ、茨木先輩。雪華がアンタを選ぶわけないだろう? 僕だって雪華に必ず好きになって」

 銀星と茨木先輩の二人がまくし立てるようにやいやい言い合いを始めたので私は構わず歩き進める。

「遅くなっちゃうからっ! 急ごう。二人ともっ、帰るよ〜」

 それにしても早く小河童を見つけ出さないと。
 仲間と出会ったってどんな妖怪だろう?

 私はどこか不穏を感じててざわざわと胸が騒いでいた。