「り……早川くん、どうして」
「たまたま会話が聞こえちゃってね」
ニコリと笑ったまま、律紀に「はい」と球を手渡された。
「蓮見さんって意外とか弱そうだから、10ポンドじゃ重いと思うよ」
「………」
それは、つまり。
お前は力ないんだから10は無理だ、と。
目がそう言っていると理解した。
あぁ、ほんと……ムカつく。
「早川くんこそ、結構スタイルいいし重い球は難しそうだよね」
律紀だって、男のくせに細いんだから無理しない方がいいよ。
「そんなことないよ。蓮見さんなら俺のこと知ってくれてると思ってたのになぁ」
んなわけねぇだろ。お前が知らないわけねぇよな?
あぁ言えば、こう言う。
未央を含め周りに人がいる手前、普通に話してる風にはなってはいるけど。
お互いの言ってることがわかってしまうからこそ、この嫌味な会話はしばらく続いた。



