「ちょっと、昔の話をね」

にっこりと胡散臭く笑って、律紀は言った。


「お、楽しそうだな。今度オレも聞きたい」

「とか言って、樋山は主に唄の話を聞きたいだけでしょ?」

「あ、バレた?」


呆れた、とばかりの未央に、ヘヘッと笑うシュウちゃん。


なんとかさっきまでの空気が上手く流れそうで、私は静かに胸を撫で下ろした。



───キーンコーン……。

いいタイミングで、予鈴が鳴った。



またあとでな、と、シュウちゃんは自分の席に戻っていく。



「あ、そうそう。最後に一つだけいい?」


バタバタとクラスメイトが席に着く中で、未央は再び律紀に向き直った。


「ちょ、未央……」

「ごめん唄。これだけは言わせて」


強い意志のこもった彼女の瞳に、何も言えなくなる。


あぁ、未央は私を守ってくれてる。

そう思うには十分だった。