仮面王子とのメモワール



「授業始めるぞー。席につけー」

そして同時に先生も入って来てくれたものだから、この話はここで終了。


シュウちゃんも自分の席へと戻っていく。



……た、助かった。


ホッと肩を撫で下ろすと、隣からクスリと笑う声がする。


チラッと横目で見ると、こちらを見ていた律紀とばっちり目が合ってしまった。



「……っ!」

慌ててそっぽを向くけど、もう遅い。


「わかりやすすぎ」


小声で聞こえたその言葉は、無視した。



もう、なんなの。


彼の考えることがまるでわからなくて、イライラする。


それ以上に、こんな状況でも少し目が合っただけで心臓の音が速くなってしまう自分のことが嫌だった。


忘れたかった。

忘れようとしていた。



それなのに、ただ目の前に現れただけで、こうも簡単に忘れられなくなってしまう。



その後の授業は、ただ真っ直ぐに黒板だけを見て過ごした。