なんだか涙腺が緩んできて、グッと涙がこぼれるのを抑えた。


あー、もう、やだ。

この人の前でなんて、もう二度と泣きたくない。


そんな私を見た律紀は、少し目を見開いた。

そして直後、パシッと私の手首を掴む。



「……っ、な、に」

「………」


びっくりして、声が途切れ途切れだ。

睨む気すらおきない。


そっちから掴んだくせに、律紀は何も話そうとしなかった。


バカ。律紀の、バカ。



私がどれだけ寂しかったか。

どれだけ辛かったか。

どれだけ……、待っていたか。


どうせ、律紀にはわからないでしょう?



「離してよ」


もう一度言っても、律紀が離す様子はない。


手首から伝わる体温に、懐かしさが込み上げてくる。



「唄、」

静かに、彼が私の名前を呼んだ。