────"早川律紀が帰ってきた"。





一部の生徒達がそんな噂をしているのを、今朝耳にした。


そしてそれを決定づけるかのように、いま私の視界には、完璧な笑顔を振りまく彼がいる。


「早川律紀です。どうぞよろしく」

担任から転校生だと紹介された彼は、教卓の横でペコリとお辞儀した。


クラスメイトから一点に注目を集めている。

女子達から小さく黄色い声が聞こえた。



「ちょ、ちょっと、唄(うた)、知ってた!?」

「……ううん、全然」


前の席に座っている幼馴染の古河未央(ふるかわみお)が、興奮した様子でこちらを振り返った。


一方の私は、ただ呆然と目の前にあるこの光景を眺めるしか出来ない。



知らない。聞いてない。こんなこと。


……なんで。