「よし、」

震える手でインターホンを押す。

10秒もしないうちにインターホンから声が聞こえた。

『はーい、どちら様ですか?』

「楓です、櫻井楓です」

『あら、楓ちゃん?
 今すぐ開けるから待っててね』

そう告げられると、インターホンが切れた。

インターホンが切れてから数秒後に玄関のドアが開いた。

「楓ちゃん!
 来てくれてありがとう
 あっ、そうだ
 美味しいケーキをいただいたから、よかった
 ら食べていかない?
 立ち話もなんだしね」

「いえ、すぐ終わりますので」

「そう?」

相変わらずこうゆう優しいところがおばさんっぽいな。

「今日はなんでうちに来てくれたの?」

「これを翔太に渡したくて」

「…手紙?」

私がおばさんの前に出した封筒をまじまじと見つめてからそう聞いてきた。

「はい、手紙です」

「でも、なんで手紙なんて?」

「翔太から手紙をもらったじゃないですか?
 なので、お返事を書かなきゃと思いまして」

「なるほどね
 なら、うちにあがって直接渡したら?」

「え?
 あっ、でも…」

「大丈夫よ
 ケーキ食べてけなんて引き留めて長居させ
 るつもりはないから」

ならいいかと思った私は、はいと答えて家に上がらせてもらった。