ずっと立ち尽くしていると、隼翔くんが私に気づいた。

「あれ?楓じゃん」

「こんにちは」

「こんなところで何してるの?」

「ここ、帰り道で
 隼翔くんこそ、こんなところで何してる
 の?」

「あぁ、ちょっと考え事」

「そうだったんだ」

なんの?

そこまでは聞けなかった。

聞いてはいけない気がした。

「でも、なんでそこで立ち止まってたの?」

「隼人くんを見つけて声掛けようかどうか迷
 ってて、そしたら隼翔くんが私のこと気づ
 いてくれて」

「そうだったんだ
 全然声掛けてくれてよかったのに」

「掛けたかったんだけど今にも泣き出しそう
 な顔してたから」

「あれ?
 そんな顔してた?」

「うん、してたよ」

「そっか
 気づいてなかった」

「あのさ、ひとつだけ聞きたいことあるんだ
 けど聞いてもいい?」

「俺が答えられることだったらいいよ」

「なんで泣きそうな顔してたの?」

「えっと、それは…」

「嫌だったら無理して言わなくていいよ」

「うん、ありがとう」

「全然平気だよ」

「俺からも一つ聞かせてほしい」

「うん、いいよ」

「今日翔太からなんか聞いてる?」

来た。

来るだろうとは思ってた。

でも、いざ来るとやっぱり翔太になんかあったんじゃないのかと不安に駆られる。

それを察しられないように平静を装う。

「今朝、今日も一緒に学校行こうと思って準
 備してたら、翔太から連絡が来て、今日体
 調が悪いから学校休むって言われて」

「それだけ?」

「そのあと、帰りにお見舞い行くねって伝え
 たら来なくていいって言われちゃってさ
 3年前まではお見舞いに行くとめっちゃ喜
 んでくれたから、なんか少し寂しくて
 ちょっと残念だったけどこないだって言わ
 らちゃったらしょうがないよね」

「そっか」

「なんでこんなこと聞いたの?」

「えっと、翔太といつも一緒に行ってるから
 翔太のやつちゃんと連絡したかなって思っ
 てさ」

「そっか
 やっぱり優しいね」

「いやー?
 そんなことないぞ」

「あのさ、やっぱりあと一つだけ聞いてもい
 い?」

「うん、どした?」

聞いてはいけないと自分に言い聞かせてた。

でも、こんなに隼翔くんも翔太のこと心配してたら理性なんか吹っ飛んだ。

「この前、うちに来た時翔太からなんか聞い
 てる?って聞いたじゃん?
 それってどうゆう意味なんですか?
 あの時はなんでもないって言ってたけどなん
 でもなくないですよね?
 教えてください、お願いします」

「翔太、ごめんな」

えっ?

「俺、黙っとくなんてできないわ
 俺のこと嫌いになるよな
 それでも楓には伝えなきゃいけないと思う
 から伝えるぞ」

どうゆう意味なのかほんとにわからなかった。

「今から話すこと最後まで冷静に聞いてほし
 い
 それと、これは嘘でも冗談でもなんでもな
 い事実だということ前提で聞いてくれ」

「わかりました」

今の私には最後まで隼翔くんが話すことをしっかりと事実として受け止めることしかできない。

だからこそ、どんな話であろうと絶対に最後まで聞こうと決めた。