寒気がする。皆はどうだろうかと辺りを見渡す。
「こっちの方にも行ってみようぜ」
そう元気に歩き回るのは同僚の鈴木 慶(すずき けい)
「噂通り、中々薄気味悪い所だな」
冷静な態度をとるこの男は友人の佐藤 彪馬(さとう ひょうま)
二人の様子を見るに、私の感じている寒気は内容だった。
「やっぱり廃村ってのはいいよな〜。 なんて言うかこう、趣があって」
確かに私も廃村は好きだ。昔、人が住んでいたであろう痕跡を見つけると、何故だか胸が苦しくも暖かい気持ちになるからだ。
私達が今来ている、かつて『わかい村』と呼ばれていた場所にもしっかりと人々の痕跡が残っていた。
「なぁ、なんで由夏はさっきから静かなんだ? 由夏がわかい村に行きたいって言ったから来たんだ、もっと楽しもうぜ」
そう、わかい村に行きたいと言い出したのは私だ。スマホでネットを見ていた時にたまたま流れてきた記事。そこにこの村の事が書いてあった。わかい村に関して詳しい情報は一切書かれていなかったが、何故か私はこの村に興味を持った。
「え?うん、なんとなくボーっとしてた。 こういう所でボーっとするの好きなんだよね」
私は嘘をついた。ボーっとするのが好きなのは間違い無いが、今私が静かなのは、よく分からない寒気があるからだ。