あなたの笑顔が好きだから。


幼い頃、お母さんが誕生日プレゼントとして、少女向けアニメのヒロインが変身するおもちゃを買ってくれたことがあった。

今は電池が切れていて、全く使えないけど、どうしても捨てられなくて、クローゼットの中に閉まっている。

すごく嬉しかった。

お母さんの貴重な休日に2人でお出かけして、一緒にご飯を食べたり、好きなものをたくさん買ってくれた。


「……帰ろ」


ここにいる意味もないと理解し、この場から離れようと一歩足を踏み出した時だった───…。


「…っ!」


くんっと、誰かに後ろから引っ張られるような感覚がした。

びっくりして振り返ると、3、4歳くらいの男の子が私の服の裾を掴んでおり、じー…っとこちらを見上げながらこう言った。



「みおちゃんっ!」

「…へっ??」



キョトンとしていると、男の子は首を傾げて「あれ?みおちゃんじゃなかった…」と不安そうな表情をする。


「み、ミオチャンじゃなくてごめんね…」


無理やり笑顔を作って去ろうとするも、男の子は掴んでいる手を離そうとしなかった。