映画の内容が良かったのは本当だ。
ボロボロの傷だらけになっていたヒーローに手を差し伸べてくれたのがヒロインで、自分が弱っている時に優しくされると、恋にならないわけがないと思う。
それに、ヒーローから一途に100%の好意を向けられるヒロインが羨ましかった。
「ヒロインの役を演じてた"椎名つぼみ"、めっちゃ美人だったよね〜。あの見た目でアラフォーって詐欺じゃん!」
「アラフォーでアラサーの役ができるとか……。芸能人ってやっぱすごいよね。次元が違う」
元アイドル・椎名つぼみ。
アイドル時代は、グループの絶対的エースとして注目され、絶大な人気を誇るセンター。
しかし、アイドルを卒業し、16歳から女優業一本でやっていくことを発表した。
更には、初主演の映画で日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞するなど、今でも話題の実力派女優として大活躍中とのことだ。
椎名つぼみとヒーロー役の人が写っている画像をぼんやりと見つめていると、隣にいる杏子ちゃんから何やら視線を感じた。
「おわっ…えっと、杏子ちゃん、どうしたの?」
「ん…?いや、よく見たら芽依ってさ。椎名つぼみと雰囲気?顔?が似てるな〜って……」
「……エ"ッ!!??」
杏子ちゃんの唐突な発言に驚愕していると、「それ、あたしも思った」と瑠璃ちゃんが同感する。
「芽依と初めて喋った時、なんとなく似てるとは思ってたんだけど。……まあ、似ている芸能人あるあるだよね」
「わたしもたまにアイドルグループの誰かに似てるって言われたことあるよ!」
「誰かって誰?」
「知らなーい」
私が女優の椎名つぼみに似ているという話題は徐々に逸れていき、いつの間にか別の話に変わっていて、私はただ瑠璃ちゃんたちの会話を聞いている中、心臓がやけに早鐘を打っていたことは、2人には内緒だ。



