夏休みの日数が残り半分となったとある日のこと───。


「……日山先輩、好きな人ができたらしい…」

「「……えっ??」」


フルーツタルトをフォークでつつきながら、杏子ちゃんは今にも燃え尽きそうな表情で頭を抱える。

今日は、3人で映画館へとやって来た。

また、映画の上映時間まで余裕があるということで、私たちは現在、映画館の近くの喫茶店でのんびりと過ごしている。


「最近噂で聞くけど…。それ、マジなやつ?」

「わかんない。でもみんな言ってるんだよね。『日山先輩、なんか雰囲気変わったね』って……」


「ふうん」と、相槌を打つ瑠璃ちゃんは、注文したチーズケーキをぱくりと口に運んだ。


「芽依はどう思う?」

「ゔぇ…っ!?あっ、えっと……」


私に話を振ってくるとは思わなくて、あたふたしながらどう答えようか一生懸命頭を働かせる。

しかし、何も思いつかず、「わかんない…」と何の役にも立たない返事をしてしまった。


「芽依もわかんないかー…。 ……あっ、ねえ、深森先輩は?あの人から何か聞いてたりしてない?」

「うーん、特に何も……」