高校1年生の5月。
新しい学校生活にも大分慣れてきて、毎日楽しく友人たちと騒ぐ今日この頃。
あれ以来、不良から助けてくれた"王子様"には一度も会えていない。
あの人と出会った場所や公園など、何度か寄ってみたけれど、彼が現れることなく今に至る。
「めーい!まーた運命の王子様とやらのこと考えてんの〜?」
つんっ、と人差し指で頬をつついてくる杏子ちゃん。
「名前とか、どこの学校の人なのかまだわかってないもんね〜」
肩をすくめて私の前の席に座る瑠璃ちゃん。
生まれて初めて、誰かに一目惚れをして。
生まれて初めて、誰かに恋をした。
恋をすると世界が色づいて見えるって何かで聞いたことがあるけど、本当にその通りだと思う。
あの日、私を不良から助けてくれて、優しく手を握ってくれた王子様がずっと頭の中にいる。
会いたいな。
あの人と会って、もう一度『ありがとうございました』って、お礼を言いたい。
「ところでさぁ、芽依の"王子様"ってどんな人なの?同い年くらいってことはわかるんだよね?」
「う、うん…」
私服だったからどこの学校の人になのかはわからないけど、たぶん、同年代くらいだったと思う。