──『萩ちゃん、何してんの?』
──『……萩ちゃん、"りょうたくん"って誰?』
私を"萩ちゃん"と呼ぶのは、1人しかいない。
しかも、玲太くんには『帰れ』と言われて、そのまま放り出されたし、麻弥くんはそもそもまだ学校に来ていなかった。
「あたし思ったんだけど、深森先輩ってさ、もしかしたら芽依のこと気になってるんじゃない?」
「それな!そうじゃないと、毎時間様子なんて見に来ないよね!?」
待って待って。
私、家のこと話してないよね…!?
口滑らしたりしてないよね…!?
ただでさえ、先輩のお姉さんが車で迎えに来てくれて、私の家まで送ってもらったというのに、更には、先輩の前で泣いて、保健室に連れて行ってもらっていたなんて…。
「ねえ、芽依、深森先輩との進展はどう──…って、だめだ、話聞いてないわこの子」
瑠璃ちゃんたちの話を全く耳に入ってこなかった私は、あることに決断を下した。
「…せ、先輩に謝らなきゃ……」
この時は、「謝罪」という言葉しか頭になく、2人がやれやれと言った表情を浮かべていることにも気づかなかった。