「……えーっと、おれ、自販機行ってくる〜」
「あっ!おい、待てよ真くん!」
麻弥の呼び止める声に聞こえないフリをして、おれは逃げるように教室を出た。
──『…玲太くん、来てくれたの?』
──『家にがえりだぐない〜〜〜っ…』
同級生の男の子の名前を呼ぶ萩ちゃん。
大粒の涙をぽろぽろ流す萩ちゃん。
あの子と関わっていくうちに、おれにだけ色々な表情を独り占めできたら───…なんて、考えてしまった。
「あっ、いた!シンシーン!」
数人の女子たちがおれの姿を見つけてこちらに駆け寄ってくる。
「ねえ、シンシン。次はいつウチらと遊んでくれるの?」
「最近、あたしらが誘ってもすぐ断るじゃん〜」
上目遣いで見上げてくる彼女たちに「えー…」と、曖昧な返事をして、笑顔を浮かべる。
──『他の女の子と比べて、どこか芽依に対して特別扱いしてるようにも見えるけど?』
麻弥の言葉が脳裏に過ぎる。
「ちょっと〜、シンシン聞いて──…」
「ごめん」
そう言うと、女の子たちは「えっ…?」と声を揃える。
「……もう、遊べない」
たぶん、きっとこれは───…。
「…ってゆーか、皆と遊ぶのやめるわ」
「おれ、気になる子できた」



