…待って、お母さんに電話するの?
「…だめ、やめて。でんわしないで」
「えっ、何で…」
「…お願い。お母さんに迷惑かけたくない」
ただでさえ仕事で忙しいのに、私が熱を出したなんて言ったらお母さんの邪魔をしてしまう。
それだけはだめ。
お母さんには負担をかけたくない。
…でも、家に帰ったら今みたいにしんどい思いをしなくちゃいけない。
一人でずっと苦しまなきゃいけない。
ベッドで一人、誰にも側にいてもらえないまま過ごさなくちゃならない。
「……やだ」
「へっ…」
熱で精神面が弱っているのか、涙腺が崩壊し始めて、涙で視界がぼやけ出す。
「ゔぅ〜〜〜っ…やだぁ…一人やだよ〜〜っ…」
「えっ!?萩ちゃん!?」
ポロポロ流れ落ちる涙に目の前にいる人は焦った声で私を呼ぶ。
「家にがえりだぐない〜〜〜っ…」
まだ登校してくる生徒が多い中、唸るように号泣する私は、周りの人たちから注目を浴びてしまう。
「深森が女子泣かしてる〜」
「えっ!?違っ…」
「その子可哀想…」
「シンシン最低〜」
周りの目を気にせずビービー泣きじゃくった後、眠気が押し寄せてきて、瞼を閉じた瞬間、そのまま意識を失った。



