あなたの笑顔が好きだから。



「萩ちゃん、何してんの?」


「フラフラじゃん」と、心配した声が聞こえてくる。

視界が霞んでいて、誰が私に話しかけているのかわからない。


「…玲太くん、来てくれたの?」

「……」


玲太くんがわざわざ来てくれるなんて。

明日、雪が降るのでは?───…なんて、本人に言ったら怒られそう。


「……萩ちゃん、"りょうたくん"って誰?」


どこか怒ったような、気に食わないような低い声が上から降ってくる。


「…おれ、"りょうたくん"じゃねんだけど」

「…じゃあ麻弥くん?」

「…麻弥でもねえし」


麻弥くんでもないなら目の前にいるシルエットの人物は一体誰なんだろう。


「……誰でもいいや」


頭が働かなくて、考えるのをやめた。


「そのパーカー男子のじゃん。誰に借りたの?」

「……」


…うるさいな、そろそろ腕離してほしい。


「……はーっ、しんど」


目眩がしてきてそのまま床にしゃがみ込んだ。


「ちょっ、萩ちゃんっ、手すげー熱いじゃん」


大きな手が上から重ねられて、何故だかその温もりに安心してしまう。


「まずは保健室行こ。そんで先生に電話してもらって、お家の人に迎えに来てもらいな?」

「……その前に真ちゃん先輩に『今日は行けません』って伝えにいかなきゃ…」

「おれのことはいいから、まずは保健室!萩ちゃんのご両親、すぐに電話出られたりする?」

「……でんわ」