***
「ゴホッ、ゲッホ!!」
真ちゃん先輩との約束の日がやって来たのだが───…昨日と一昨日、楽しみすぎるあまり中々眠れず、運が悪いことに風邪をひいてしまった。
「…オハヨ〜……」
「おは──…えっ!?芽依、あんた……」
「なんつー顔してんの!!」
杏子ちゃんたちに挨拶をすると、2人はぱちくり私の顔を凝視する。
「芽依、熱あるじゃん!今すぐ早退しな?」
「…真ちゃん先輩との約束ある……」
「『風邪引いたので今日は行けません』って連絡したら?」
「…先輩と連絡先交換してない……」
私の返答に2人は「あちゃ〜…」と声を漏らす。
「帰れ」
「だから帰ら──…うぶっ!?」
突然、誰かがズボッ!と上からパーカーを被せてきた。
「玲太くんやっさし〜☆」
杏子ちゃんの茶化す声がして、やっと視界が見えるようになった。
「俺のパーカー貸してやるから帰れ」
黒のパーカーを着せる玲太くんが無愛想な声色で帰るよう促してくる。
「やだ、真ちゃん先輩との約束破りたくない」
「おまえ、その状態で一緒にいられる方が迷惑なのわかってる?」
玲太くんのパーカーが大きいのか、中がすごくごわごわしている。



