あなたの笑顔が好きだから。


***


「ゴホッ、ゲッホ!!」


真ちゃん先輩との約束の日がやって来たのだが───…昨日と一昨日、楽しみすぎるあまり中々眠れず、運が悪いことに風邪をひいてしまった。


「…オハヨ〜……」

「おは──…えっ!?芽依、あんた……」

「なんつー顔してんの!!」


杏子ちゃんたちに挨拶をすると、2人はぱちくり私の顔を凝視する。


「芽依、熱あるじゃん!今すぐ早退しな?」

「…真ちゃん先輩との約束ある……」

「『風邪引いたので今日は行けません』って連絡したら?」

「…先輩と連絡先交換してない……」


私の返答に2人は「あちゃ〜…」と声を漏らす。



「帰れ」

「だから帰ら──…うぶっ!?」



突然、誰かがズボッ!と上からパーカーを被せてきた。


「玲太くんやっさし〜☆」


杏子ちゃんの茶化す声がして、やっと視界が見えるようになった。


「俺のパーカー貸してやるから帰れ」


黒のパーカーを着せる玲太くんが無愛想な声色で帰るよう促してくる。


「やだ、真ちゃん先輩との約束破りたくない」

「おまえ、その状態で一緒にいられる方が迷惑なのわかってる?」


玲太くんのパーカーが大きいのか、中がすごくごわごわしている。