あなたの笑顔が好きだから。


「いいの?」と立ち尽くす永遠に声をかける。

すると、「睨まれた」と驚く永遠に「そこかよ」とツッコんだ。


「…なあ、あの後ろ姿、オギノさんじゃね?」

「は?オギノさんって誰?」


永遠の視線の先を辿っていくと、逃げるように走り去って行く萩ちゃんの後ろ姿が視界に入った。

あんなに急いでどうしたのだろう。

しかも、ここは2年の教室がある階だ。

誰か知り合いにでも用事があったのだろうか。


「いや、あれオギノさんじゃないし。ハギノさんだし。そろそろおれの好きな人の名前覚えろっての!」


そう言って、おれは萩ちゃんの後を追いかけた。


「萩ちゃん!」


急に立ち止まって俯いている萩ちゃんを呼び止める。


「さっき萩ちゃんらしき後ろ姿が見えたんだけど…。やっぱり萩ちゃんだった!」


この時、おれは知らなかった。

せっかく話せたのに、どうして萩ちゃんの反応がなかったのか。

どうして2年生の教室に来ていたのか。

そして、この日以降から地獄を見ることになるとは思いもしなかったのだった───…。