あなたの笑顔が好きだから。


恥ずかしすぎるあまりに、私は勢いよく先輩の体を押しのけて距離をとった。

目をぱちくりと(しばたた)かせる先輩に、顔を覆いながら何度も謝る。


「ご、ごめんなさい、ごめんなさい。きょうはその、むりです…!ほんとにごめんなさい…!!」


この前まではキスしたくて仕方なかったのに、何故か今はできる勇気がないというかなんというか…。

トマトみたいに頬を真っ赤にさせて、1人自己嫌悪に陥っていると、「ぶはっ…」と先輩は吹き出した。


「な、なんでわらって……」

「んっふ…。ごめん。ぶふっ、んははっ…」


ずっと思っていたことなのだが、先輩の笑うツボがいまいちよくわからない。

しばらくして、笑いがおさまったのか、ふー…っと先輩は一息ついた。


「おれの方こそいきなりキスしようとしてごめん」

「い、いえ、そんな…」


むしろしたかったというのが6割で、先輩と近い距離間に耐えられなかったのが4割。


「キスはお預けになっちゃうけど、そんな焦らなくてもいいじゃん。おれたちのペースでゆっくりやってこうよ」


頭を撫でられて、「はい」と弱々しい声で頷いた。

あぁ、もったいないことをしてしまった。

私はなんて馬鹿なんだろう。