「せんぱい…」
そう呼ぶと、先輩は「ん?」と目を細めて首を傾げる。
こんな、ちょっとした仕草でもときめいてしまって、私は相当先輩に惚れ込んでいる。
好き。大好き。
好きすぎて、このままバイバイしたくない。
「家帰ったら、また連絡してもいいですか?」
「うん、いいよ」
「……っ、あの、わがままになっちゃうんですけど…」
まだ、先輩に触れていたい。
「ぎゅって、してほしい、です……」
私のお願いに、先輩は「いいよ」と頷いてくれて、先輩の腕が伸びてきたと思ったら、そのまま優しく抱きしめてくれた。
先輩の香りと体温に包まれて、幸せな時間を噛み締めた。
…どうしよう。
私、どんどん欲張りになってる。
少し体を離して顔を上げると、先輩の黒い瞳に私の姿が映った。
なんだか、距離もいつもより近いような気がする。
「……」
「……」
数秒程見つめ合って、私は背伸びをした。
ゆっくりと縮まっていく私たちの距離に、心臓の音がより鮮明になっていく。
そして、お互いの鼻先が一瞬だけ触れた時、私は咄嗟に目を開けてしまった。
「……や、やっぱむり…」
「…んえっ?」
「む、むりむりむり!心臓が爆発しちゃうっ!!」



