ちなみに、お母さんとはお互いに歩み寄った日以降、連絡をする頻度が増えた。
あと、時々通話をしたりして1日の出来事や何でもない日のことなど、色々話したりしている。
また、通話していた時にお母さんは『芽依は、父親だった人に会いたい?』と聞いてきたことがあった。
私の父親になるかもしれなかった人は、現在工事現場で働いており、お母さんとその人は一応互いの連絡先は持っているらしい。
お母さんの問いに少し悩んだが、『会いたいとは思わない』と答えておいた。
私の答えにお母さんは『そっか』とだけ呟いて、それ以上は何も言わなかった。
だって、顔も名前も知らないし。
家族でも何でもないなら会う必要はない。
お母さんは普段から忙しくて、なかなか返事できる時間がとれないこともあるけれど、お母さんと話す機会も増えて、今の私にとっては十分、幸せで贅沢なひと時なのだ。
「そんじゃあ、萩ちゃん。また明日」
気がつくと、マンションの前に到着していた。
やっぱり、帰り道は一瞬で、楽しい時間があっという間に過ぎていく。
もっと一緒にいたかったし、もっとたくさん話したかった。
名残惜しくて、今繋いでいる手を離したくない。



