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「萩ちゃん、ごめんね〜。もっと早く来たかったんだけど…。チカくんたちに何もされてないよね?」
「あっ、はい。大丈夫です…」
学校を出てからも、先輩は手を握ったままでいてくれている。
小指だけ握るんじゃなくて、今は普通に繋げているという事実が信じられないくらいに嬉しい。
こうしてみると、数ヶ月前の頃は先輩と手を繋いで一緒に帰るだなんて、思いもしなかった。
「先輩は、さっきの人たちに私たちが付き合ってること言ってなかったんですか?」
「ん?うん、言ってないよ。永遠とまやっちには報告したけど」
「チカちゃんさんたちとは友達ではない感じですか?」
「まあ、そうだね。顔合わせたら話すってだけで、そこまで仲良くはないよ」
「そ、そうなんですね…」
男子は基本誰とでも話すし、女子みたいに喧嘩もなく同性同士みんな仲良しなイメージが私にはあったが、先輩でも仲良い人とそこそこ仲良しな人で区別をつけるタイプなんだなあ…と新たな発見をする。
意外だ。
特に先輩みたいな人は人見知りとかしなさそうだし、男女問わずすぐに色んな人と仲良くしそうなのに。
「…あっ、そういえば、お母さんに先輩と付き合ってるってことを伝えたら、ぜひ会いたいって言ってました」
「えっ、マジで?椎名つぼみが…?やっば!会ったらデビュー曲一緒に歌いたい!」
「お母さん、元アイドルではあるけど、アイドル歴は意外と短いので歌唱面はあまり期待しないでほしいそうなんで、『お手柔らかにお願いします』だそうです」



