あなたの笑顔が好きだから。


「おいお前ら早く走れって!このままだと遅刻確定だぞ!!」

「チカちゃんが購買で何買うかずっと悩んでたのが悪いんじゃん!!」

「そーだそーだ!俺らは悪くねーし!!」


生徒玄関に到着した時、エナメルバッグを肩にかけ、部活用のジャージを着ている男子生徒たちが慌てた様子で目の前を通り過ぎていく。

すると、後ろの方で走っている男の子の鞄から、ポロッと何かが落っこちた。

私はそれを拾うと、「あのっ…!」と男の子に声をかける。


「えっと、これ、落としましたよ…」


赤いフェルトにバスケットボールのワッペンが中央に付いていて、手作りのお守り袋を不思議そうな顔で振り返る男の子に見せる。


「わっ!すみませんっ!」


男の子は小走りで私が持っているお守りに手を伸ばした。


「オレにとってすごく大切な物だったんで、拾ってくれてありがとうございます!」

「いえいえ」


お守りを彼の手の平に乗せようとしたら、ちょんっ、と指先が触れて、その瞬間、男の子はびっくりしたのか「ひょわぁっ…!?」と後ろに飛び跳ねた。

私も彼の声に驚いて、思わず肩を震わせた。


「どうしたんだよ、チカちゃん〜」

「遅れるって言ってた本人が何足止めてんだよ〜」