先輩の言う通りに顔を上げた瞬間、むちゅっと軽いリップ音が聞こえたと同時に、何かやわらかいものが頬に触れる感触がした。
「はえっ…?」と間抜けな声を漏らす私に先輩はすっと目を細めて、いたずらな笑みを浮かべてじっ…と私を見つめる。
今、何をされたのかすぐに理解した。
突然のキスにびっくりして、じわじわ顔が熱くなっていく。
「せ、せんぱい。き、ききききすはしないって……」
「えー?ほっぺだしセーフだもーん。それに、こういうことするのは萩ちゃんにしかしないし…」
「なっ、そんっ…おぉんっ……」
「誕生日おめでとう。言うの遅くなってごめん。……そんじゃあ、ばいばい!」
日本語を上手く話せない私を差し置いて、先輩は手を振りながらこの場を去って行く。
しばらくして、先輩の背中が小さくなった頃にはやっと現実に引き戻されたかのように、ハッと我に返った。
先輩の背中を見送りつつ、片手を頬にそっと手を当てる。
一瞬だったけれど、頬に触れた先輩の唇が柔らかかった…なんて、気持ち悪いことを考えてしまう。
あまりにも幸せな時間だった。
体がいつもより軽い気がする。



