いっそのこと、自分からすればいいと思い、迫ってみるが、先輩に押さえ込まれてしまい、再度抱きしめられる状態となった。
「好きだよ、萩ちゃん」
「…っ、私も好き、です…」
「萩ちゃんのこと、本当に大切にしたいからさ。キスはまた今度ね」
「……はい」
「でも、いつか絶対キスしようね」
「ゔっ、ひゃい…っ」
先輩とキスができなくて、残念だったけど、こんなにも私のことを好きになってくれているとは思わなくて。
私も彼の背中に腕を回して、これでもかというくらい強く抱きしめる。
「はぁー…っ、やばい。好きすぎておかしくなりそう…」
そっと体を離され、もういいの?と思いながら見上げる。
「…おれさ、萩ちゃんのことすんげー好きなんだけどさ」
「? はい…」
「ものすごく萩ちゃんが好きなのに、おれ、萩ちゃんのこと全然知らないんだよね」
「えっ…」
「ずっと気になってたんだ。萩ちゃんが熱を出した日、『お母さんに電話しないで』とか『1人はいやだ』って言って泣き出したり…。何でりょうたくんが合鍵持ってんのか、とか……」
「……」
「教えてよ、萩ちゃんのこと」
真っ直ぐな瞳に見つめられて、話すべきかどうか悩んだが、「分かりました」と頷き、立ち上がる。
私は、リビングの隅っこに雑誌が山のように積まれている所へと向かった。



