「萩ちゃん」
優しい声色で、名前を呼ばれる。
先輩は、少しだけ私から体を離して、目を細めながら、
「おれの彼女になってよ」
心臓が壊れてしまいそうなくらい、愛しそうな表情でそう言った。
私は何度も頷きながら返事をする。
「なります、なりたいです…っ」
幸せすぎて、両手で自分の顔を覆い隠そうとすると、先輩の手が伸びてきて、阻止されてしまう。
それから、先輩の香りが更に強くなった。
気づいた頃には、先輩の綺麗な顔が視界いっぱいに広がっていて、反射的に目を閉じる。
そして、お互いの鼻先がちょんっと当たった瞬間、先輩は我に返り、「おわっ!!?」と大きな声を上げて、勢いよく私から離れた。
胸元に手を押さえながら呼吸を整える先輩を見て、ポカンと口を開けて呆然とする。
「……あっぶねーっ。おもわずキスするとこだった…」
私もてっきりキスされると思っていたから、目を閉じて待っていたのに…。
「……キス、してくれないんですか?」
そう聞くと、先輩はぶわぁ…っと一瞬にして頬を紅潮させる。



