「頭突きさせてください」
「エェッ!!??」
予想外の発言に、先輩は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする。
「勘違いをしていた私も悪いです。でも、女の子たちと楽しそうに話している先輩を見て、すごく嫉妬しました」
真ちゃん先輩は、私だけの先輩じゃないし、みんなの先輩でもない。
だけど、先輩を好きなのは私だけでいいんだ。
独り占めしてもいいんだ。
どろどろと、"独占欲"という感情が芽生え、その気持ちが丸出しになっていく。
「だから先輩、歯食いしばってください…!」
「えっ、ちょ、萩ちゃ──…」
先輩の話に聞く耳をもたずに、私は躊躇うことなく頭突きをかまし、おまけに逆エビ固めも決めてやった。
終始、先輩の「ぎゃあぁぁぁっ!!」という悲鳴がリビング内に響いたのだった。
「ゔぅっ…こしとおでこがどうじにいたい…」
さっきまで絨毯の上で倒れていた先輩は、目に涙を浮かべながらヨロヨロと起き上がる。
「これで、お互い仲直りです!」
同じ目線になるよう先輩の前にしゃがみ込み、ニッと笑いかけながら言った。
そんな私を見て、先輩はフッと小さく笑う。



